あかねとの初対面は7、8年前であった。スティーブ(彼はドイツ人)から拘束の好きな女性がいるが撮影をしないかと連絡があり撮影をした。彼女は撮影の緊張感からか我々の挨拶にも上の空であった。
まずは柱に佇んでもらい最初のシーンを始めるのであったが、スティーブの縄が胸にかかるやズルズルと酸欠を起こした様に崩れ落ちた。緊張と期待があかねを飲み込んだのか。撮影は彼女にとっては特別な状況を作っていた様だ。その後彼女は業界を離れていた。それが2年ほど前からカンバックしてきた。
目黒ハウスは広大な敷地に建つ日本家屋で美しい庭園がある。スタジオとして貸し出されて30年ほどになる。スタジオとしての契約が切れてあと数日で更地になることになっている。俺はここの庭をとても愛した。新緑の若葉、ツツジの鮮やかさ、紅葉の見事な華やかさ。随所の岩の美しさ。それが数日で失われてしまう。そんな思いで今年に入ってからは庭での撮影を多く撮った。これを書いている今ごろは木々は伐採され岩は粉砕されていることであろう。美しいものが消滅することは恋人の死を思うが如きである。
この屋敷の玄関を一度撮影したいと思っていたがなぜか撮影をしなかった。だが今回その空間に花瓶に盛った花を置いて見ると料亭の上がり框の様な空間ができた。あかねの襟を乱して縄が乳房を艶やかに盛り上げた姿に天井の電球がこぼれている。それをキーライトにして補助空をたした。暖色の光に羞恥の表情がうまいコントラストを作り明媚な姿であった。
スティーブ、蒼樹樹里、奈加あきらと、あかねは撮影をされた。初心からベテランの域に年月を重ねたことになる。当然なことではあるが初々しさは時とともに変化している、この変化は長年の閲覧者の見解をさらに豊かにするだろう。
弱音は吐きたくないがー俺の心情はまだ学ぶぞ!であるー最近の俺の写真は昭和の写真と比べると動きがない。それは時代であり業界の決め事にあると事を妥協してしまえばそれまでかもしれないが納得すべきではない。あかねの様なモデルならば動きに変化を求めて撮れるだろうと一部分は撮ったつもりだ。撮影は全身の表情と作り手の創造性でできる。一対一の格闘だ。情熱の爆発。それ以外はありえないそんな緊縛図を志す。
徒然草の吉田兼好は年老いて若者ぶるのはみっともない姿だと言うが、俺はそれがどうも性に合わない様だ。
杉浦則夫
撮影:杉浦則夫 緊縛:奈加あきら 助演:鏡堂みやび 制作:杉浦則夫写真事務所
掲載開始日 2021.4.15・22 掲載終了 2021.5.27
注意:
月額会員サイト「杉浦則夫緊縛桟敷」でのダウンロード作品の掲載期間は四週間です。
掲載終了後は姉妹サイト「緊縛桟敷キネマ館」にて販売される予定となっております。※販売時期は当分先になります。
リンク:緊縛桟敷キネマ館 →
好きな方だけにまず業的なものを身に着けたかのような大人びた表情にドッキリ。冒頭の高さのある吊り、竹に両足を固定されてのお尻へのろうそく責め、V字に足を開かれての執拗なバイブ責め等など、見どころは多いのですが、個人的には先生の「よしケツを撮ろう」とのセリフ後の後手に縛られての後姿からの場面。縄が邪魔だとの先生の言葉に敏感に反応し、首をひっかけて顔を向けるという見事な技を披露した後は、「腰を浮かせろ」「ケツを向けろ」とまさに撮影責めともいうべき要求に懸命に答え、腕は紫色に、さらにその後も責められ吊られる度に表情が、切なく、恨みがましく、縄に酔ったが如く、苦痛にゆがむが如くころころと変化し目が離せません。最後の眼を閉じ放心したかのような表情に負けず劣らず、こちらも心地良い疲労感を覚えました。