美雨 縄の雲海塾

By 2015年7月31日撮影後記

以前開催された緊縛イベント「縄の雲海塾」で撮影された作品が「杉浦則夫緊縛桟敷」にて公開開始されました。今回は杉浦則夫緊縛桟敷会員サイト内のみで公開されている「物語」を公開致します。雲海塾は現在第二弾の企画準備に入っております。
また、10月女子限定イベントも開催予定です。情報は緊縛新聞上で公開致しますので、もうしばらくお待ちください。

美雨 碧羅の天は とろりと濡れて

きつい吊りから解放されると、大きな石の上にモノのように置かれた。はだけた浴衣から覗く白いショーツの中心には、粘膜の形が指でなぞったように透けている。

 迷った末に選んだ浴衣だった。呉服屋の店員は、棚の前で途方に暮れる美雨の全身を嘗め回すように見た後、紺地の「大正ロマン風」と、白地に赤系の濃淡で大輪の花が描かれた浴衣のふたつを差し出し、こちらでしたら帯はこちら、下駄はこれがよろしいかと、と慣れた所作で台の上に並べてゆく。鏡の前に立ち、美雨は二枚の浴衣を交互に合わせていたが、愛らしい顔がより引き立つような白地を選んだ。
 「古くて大きな日本家屋がある」と、男が言った。その言葉を聞いた美雨は心臓がきゅっと縮むような感覚を覚えた。そこで縛られるのですね。たくさんの人たちの前で、私を辱めるのですね。それだけで足りなければ誰か別の男の人に縛られ、責められて泣く私を見て、あなたは楽しむのですね。俯いて唇を噛んでみせる美雨の顔を上向かせ、男はにっこりと微笑んだ。よくわかっている、いい子だと美雨の頭に手を置き、しなやかな身体を抱き寄せた。あと何回ですか? あと何回こんなことを繰り返したら、私は解放されるのですか? 男の腕の中で、美雨は暗闇を凝視しながら心の中で訊ねていた。

 蚊遣りから、煙がたゆたうように流れてくる。仄白くゆらめくその向こうを見ようとしても、こちらを見つめている男たちがどのくらいいるのか、美雨には判然としなかった。畳に座ったまま、膝を崩した恰好で後ろ手に縛られた。麻縄は美雨の手首に食い込み、乳房の上を圧迫しながら背中に回る。はあ、と思わず息を洩らすと、「もう感じてる」と、誰かが声をあげた。血走ったたくさんの眼が自分に向けられている。競り市に並んだ商品を値踏みするように、ギラギラと脂っこい男たちが少し離れた位置から美雨を見つめている。こんな視線に晒されるのは何度目だろう。ぼんやりと考えていると、畳の部屋からそのまま庭へと引きずり出された。縄尻を握られ、刑場に引き立てられる女囚のように裸足で歩くと、足の裏には細かな砂利があたり、その痛みは惨めで哀れな自分を忘れるなと美雨に突きつけているようだった。
 碧羅のような美しい麻の暖簾がかかっていた。涼しげなそこには太い梁が渡され、後ろ手にされた美雨はそこに吊られるのだとすぐに理解した。縄が足されるたび、浴衣に咲いた花はひしゃげ、形を失ってゆく。形を成さない花はそのまま美雨の心と重なり、閉じたまぶたの裏側で絢爛と咲き乱れた。
 男たちの洩らす吐息や呟きは土の上にこぼれ、吊り上げられた美雨の身体の下を転がってゆく。それを一つ残らず拾い上げ、腕に食い込む縄と太腿に食い込む縄、そして梁につながっている縄のすべてにまぶしつけ、美雨は身体と心のすべてで自分自身を感じていた。
 じんわりと湿気を含んだ土だった。一日中日の当たらないこの場所では、土も石も、陰気で不潔な空気を漂わせている。そんな石の上に下ろされると、気温の高さとは関係なくその冷たさに心臓が縮むようだ。丈の短い雑草も、細々としたゴミのような落ち葉も、何もかもがいやらしい妖気を含んでいるように見える。尻を下ろしたこの石の下には、ムカデやヤスデ、蜘蛛などがびっしりといるに違いない。おぞましい想像をしながら石に身体を預けると、手のひらに触れる砂や土のざらざらした感触が腰から背中に這い上がり、美雨の細い首をぎゅっと掴む。石の冷たさと土の気味悪さは、浴衣の下の白いショーツに、黒っぽい汚れと内側から滲む透明なシミをつくった。胡坐縛りで転がされると、男たちの視線はその部分に集中した。ショーツの中心には美雨が溢れさせた透明な蜜が内側から染み出し、薄い布地を透けさせている。あっ、おっ、とあちこちで声があがる。その声は美雨の耳にも届き、大勢の視線が集中するそこを意識すると、耳朶が熱くなるのを感じた。
 「どなたか、縛ってみませんか」特別なおもちゃを見せびらかす子どものように、男が言う。「あ、はい」「はい」と三人ほどが手を上げた。
Vol.2につづく

※本文はイベント縄の雲海塾での作品を元に制作された物語です。

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