わが撮影現場において以心伝心は不可能なことだと悟った。俺が優秀な演出家であれば巧みな話術で俺のテーマを理解させることができるのであるが。それにもっと現場を混乱させるのは俺の撮影の仕方にもある。
俺は撮影の絵コンテを作ることがない。モデルの衣装を決めた段階でおぼろげなイメージを持つ。それに現場の思いつきとモデルの調子で仕事をする。
俺の思いはプロたるものは少なくとも3種類の技術的表現を持つべきだと思う。それを互いに調和させれば多くの可能性を生む。残念なことに今回の坂本の撮影においてはそれが外れた。外れたとは俺の想いの結果であって閲覧者にはその様な本道から外れた緊縛は迷惑なことかもしれない。最近はそれに迷い悩んでいる。
洋服を用意するにあたってはモデルの容姿を頭に持って新宿のビル街の洋服店を巡回して探す。買い求めた衣装でうっすらとイメージを描く。
今回はゆったりとした白のワンピース(?)が気に入り。下着は黒。赤のハイヒール。この様な衣装の選択は緊縛の文法から外れる。俺としてはその時点でスタッフが通常の表現意識を変えることを期待するのであるが。まるでそれに気付いてくれない。
坂本の宣材にはゲームが趣味と書いてあった。ゲームに長い時間を興じる子は肩の筋肉を固めてしまう。それは後手縛りが苦手ということだ。それでも何かしらの期待を持っていた。後手縛りは刑罰であり服従である。だがそれ以外の緊縛の可能性はないのであろうか?それが俺の期待であった。いつかは閲覧者を納得させる写真が出来ることを夢に描いて。
杉浦則夫
撮影:杉浦則夫 緊縛:奈加あきら 助演:鏡堂みやび 制作:杉浦則夫写真事務所
掲載開始日 2021.12.2・9 掲載終了 2022.1.13
注意:
月額会員サイト「杉浦則夫緊縛桟敷」でのダウンロード作品の掲載期間は四週間です。
掲載終了後は姉妹サイト「緊縛桟敷キネマ館」にて販売される予定となっております。※販売時期は当分先になります。
リンク:緊縛桟敷キネマ館 →